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「パピーライセンス」という言葉を知っていますか?
「成犬が子犬の未熟な振る舞いに寛容になること」を、パピーライセンスと呼ぶことがあります。
例えば、しつこく匂いを嗅いだり、遠慮なく近づいたり。
成犬が相手を子犬として受け止め、そうした振る舞いを許容する場面があります。
もちろん、すべての成犬が子犬に寛容なわけではありません。
子犬のしつこい行動を嫌がったり、距離を取ろうとしたりする犬もいます。
パピーライセンスがあるからといって、どんな振る舞いでも許されるわけではないのです。
今、私がパピーライセンスという言葉と愛犬のことを考えると、微笑ましい姿ばかりが思い浮かびます。
ほかの犬の振る舞いには厳しいのに、子犬に対しては不思議なくらい寛容だからです。
礼儀作法にうるさい愛犬が、子犬には怒らない
うちの愛犬は、やたら礼儀作法にうるさい犬です。
ほかの犬の振る舞いが気に入らないと、はっきり態度に出します。ほかの犬が興奮していたり、犬同士のやり取りで緊張が高まったりすると、吠えて相手を止めようとすることがあります。
犬は吠える、唸る、クンクンいうなどの他に、視線や体の向き、動き方などを使って、相手とやり取りしています。
例えば、顔をそむける、視線を外す、ゆっくり動く、相手から距離を取るといった行動です。
こうしたしぐさの中には、緊張や対立を避けようとするものもあり、カーミングシグナルと呼ばれています。
ただし、同じしぐさでも状況によって意味が異なるため、一つの行動だけで犬の気持ちを判断することはできません。
犬同士の距離が近すぎたり、一方が興奮して相手の反応に気づかなかったりすると、緊張が高まることがあります。
相手が顔をそむけたり、離れようとしたりしているのに、さらに近づいていないか。
そんな様子にも注意して見ています。
そんな愛犬も、まだ小さな子犬に対しては、不思議なくらい寛容です。
ふんふんと匂いを嗅ぐだけ。
普段なら怒るような振る舞いをされても、子犬には怒りません。
ほかの犬には厳しい愛犬が、子犬にはまるで違う態度を見せるのです。
毎日のお散歩で初めて会う犬に対する愛犬の反応を、10年以上見てきました。
いつもなら注意するような振る舞いにも怒らない。
そんな愛犬の様子を見て、「あ、この子はまだ子犬なのかな」と思うことがあります。飼い主さんに「まだ小さいですか?」と聞くと、ほぼ、そうです。まれにめちゃめちゃ社交的で明るい成犬がいて、そんな成犬にも初対面で同じ反応をするので、ほぼ。という言い方になります。
犬が相手の年齢をどのように判断しているのか、私にはわかりません。
ただ、愛犬のそんな姿を見ていると、犬同士には私たちが気づかないようなやりとりがあるのだろうな、と感じます。

子犬を守ることと、経験させること
子犬をほかの犬に会わせることに、とても慎重な飼い主さんもいます。
「まだ小さいから、怒られたらかわいそう」
「怖い思いをさせたくない」
大切な子犬だからこそ、そう思うのは自然なことです。
ただ、子犬の時期は、ほかの犬との付き合い方を学ぶ大切な時期でもあります。
相手の匂いを嗅ぐ。
自分の匂いを嗅がれる。
近づいてみたり、少し離れてみたり。
そんな小さなやりとりも、子犬にとっては新しい経験です。
私は、心配するあまり、そうした機会までなくしてしまうのは少しもったいないと感じています。
すぐに抱き上げる前に、子犬の様子を見てみる
散歩中、ほかの犬が近づいてくると、すぐに子犬を抱き上げる場面を見かけることがあります。もちろん、危険を感じたときには守ってあげる必要があります。
相手の犬が穏やかに見えても、必ず安全とは限りません。相手の飼い主さんにも確認し、十分な距離を保ちながら、双方の様子を見て判断することが大切だと思います。
犬は、顔をそむけたり、動きをゆっくりにしたり、距離を取ったりすることがあります。
こうした仕草は、状況によって、相手との関わりを調整するサインになることもあります。
子犬が自分から近づくのか、それとも離れようとするのか。
相手の犬はどう反応しているのか。
そんな様子を見守ることも、飼い主にできることだと思います。
抱き上げることが悪いのではありません。
子犬が安心して経験できる場面なのか、それとも助けが必要な場面なのか。
そこを見極めることが大切なのだと思います。
子犬をほかの犬に会わせるときは、まず双方の様子をよく見ます。
相手の犬が落ち着いていても、いきなり近づけず、相手の飼い主さんに確認すること。
子犬が自分から近づこうとしているのか、怖がって離れようとしているのかも見てあげてください。
体をこわばらせたり、逃げようとしたりするなら、無理に挨拶させず、距離を取ります。
反対に、双方が落ち着いていて、無理なく近づけそうなら、短い挨拶から始めてもいいと思います。
途中でどちらかが嫌がったら、そこで終わりにします。
パピーライセンスがあれば、どんな犬とでも大丈夫?
ここは、気をつけたいところです。
パピーライセンスという言葉があっても、すべての大人の犬が子犬を大目に見てくれるわけではありません。
子犬が苦手な犬もいますし、相性もあります。
だから、初めて会う犬に、いきなり子犬を近づけることはおすすめしません。
まずは少し離れたところから、相手の様子を見てみる。
飼い主さんに、子犬との触れ合いに慣れているか聞いてみる。
そして、お互いに落ち着いていて、無理なく関われそうな場合にだけ、短い交流をしてみる。
そんな慎重さは必要だと思います。
また、必ずしも直接触れ合う必要はありません。
ほかの犬を離れた場所から眺めたり、同じ空間で落ち着いて過ごしたりすることも、子犬にとっては経験になります。
大切なのは、たくさんの犬と触れ合わせることではなく、安心できる経験を積み重ねることです。
子犬の今しかない時間を大切に
パピーライセンスには、「生後何か月まで」という明確な期限があるわけではありません。
子犬の成長には個体差があり、成犬が子犬にどの程度寛容になるかも、相手の犬や状況によって異なります。
だから、「まだ子犬だから大丈夫」と考えて、犬同士のやり取りを任せきりにしないことが大切です。
また、子犬の社会化期とパピーライセンスは、同じ意味ではありません。
社会化期は、子犬が周囲の環境や人、ほかの犬などに慣れていくうえで、特に重要とされる発達段階です。
子犬の時期にどんな経験をするかは、その後の行動にも関わってきます。
ただし、社会化は、できるだけ多くの犬と遊ばせることではありません。
ほかの犬を離れた場所から眺めたり、落ち着いてすれ違ったりすることも、大切な経験です。
子犬が怖がっていないか、無理をしていないかを見ながら、安心できる経験を少しずつ増やしていきたいですね。
うちの礼儀作法にうるさい愛犬が、子犬には不思議なくらい寛容になる。
そんな姿を見るたびに、犬同士の関わりから学べることは、まだまだあるのだろうなと思います。
守ることも大切。
経験させることも大切。
でも、その判断を犬だけに任せることはできません。
犬同士のやり取りをよく観察して、必要な時には飼い主が介入する。
愛犬を守れるのは、飼い主である自分なのだから。
怖がりすぎず、でも油断せず。
今日も愛犬とのお散歩を楽しみましょう。
おやつも忘れずにね。

獣医行動学の専門医に愛犬のトレーニングを教わっていたとき、紹介して頂いた本です。犬をむかえる前、できれば子犬の時に知って起きたかったことが書かれていたので、ご紹介します。

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